そこには、君が






「ん~!美味しいです」




「1回来たいと思っててさ」





30分くらい並んで


ようやく入れた人気店。


メニュー豊富で、


クラスの人たちも騒いでたっけ。






「この後さ、」





「ん?」





「見たい映画あんだけど、行かない?」





「行きます!映画館、久々!」







自分で分かる。


今日の私、いつも以上に


はしゃいでるな、って。







「お会計がこちらです」






店員さんが示す値段。


さらっと払う徹平さん。






「私も出しますっ…」





「いらない」





「そういうわけには…っ!」






初めてのランチで、


図々しくも奢ってもらうなんて


出来ないよ。






「徹平さん…あの、」





「うるせーぞ、高校生」





意地悪い笑みを浮かべて、


私の頬を軽くつねった。


そんな小さな仕草なのに、


私は完全ときめいていて。






「チケット買ってくる」





「あ、私も…」





「荷物番。ここで待ってて」






有無を言わさず、


自分のカバンを私に持たせると、


スタスタと受付まで歩いて行った。


いいのかな、私で。


一緒にいるのが私でいいのかな。






「寝てたら起こして?」





「え、寝ないでくださいよ」





「明香ちゃんの隣だからさ」





徹平さんは。


私の不安を。





「安心すんだろーね」





いとも簡単に吹き飛ばす。


まるで超能力だ。


徹平さんが観たいと言った映画は、


私がずっと凜に観たいと言ってた


映画だった。


ずっと好きだった人がいる主人公が、


想いを告げられずに病気になるストーリー。


こんな話、私はすごく大好きだけど。


そう思って横を見ると、


案の定こくりこくりと


首を傾げている。






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