深夜1時のラブレター


これは、よくある話の1つで。

だけど、現実にはそうそう起こるものではなく。

テレビや小説の中で使われる、常套手段だと思っていた。

実に分かり易い"ハプニング"だ。



「ねぇ、」



嘘でしょ?とか、まさか、とか。

そんな可愛い子ぶって言うつもりはないけど、自分の頬っぺたを軽く抓って、これは現実なのかと確かめるくらいのパニックには陥っている。

ぐわりと揺さぶられるような頭痛がした。



「ねぇ、ちょっと」

「……ん」



気持ちよさそうな寝息を立てていた男は、んんっと軽く伸びをしながら目を開き、それからまるで甘えるように私の首筋に両腕を絡める。

その遠慮のない仕草に、一瞬思考が停止する。



「おはよう」

「……おはよう」

「よく寝れた?」

「お陰様で……って、それより、あなた誰」



朝、目が覚めると。

裸の男の人が、自分の隣で眠っていた。

こうなった経緯の記憶は、全く無い。あるとするならお酒を飲んだところまで。それも、どこでどれくらい飲んだかなんて覚えていない。

けど、この状況から察するあたり。

見知らぬ男にお持ち帰りされちゃったわけ……あ、違うか。

お持ち帰りしちゃったんだ。

ここ、私の家だし。



「えー、もう名前忘れちゃったの?昨日も教えたよ」



クスクスと。

おかしそうに笑ったその彼は、悪戯な瞳を私に向けた。




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