白鷺の剣~ハクロノツルギ~

妖刀・白鷺一翔(ハクロイッショウ)

◇◇◇◇◇◇◇

三日間も寝込んでしまった。

こちらの世界にすっ飛ばされて気が張っていたためか、体の具合が悪い事になど全く気付いていなかった。

挙げ句に昨日は目まぐるしく働いた後に一時間弱歩き、その上白鷺と喧嘩して、血圧も急上昇したに違いない。

「何か食べるか?」

「ありがとう。でも、要らない……」

このままじゃダメだ。

何か手を考えないと21世紀に帰れない。

私はこちらを心配そうに窺う白鷺から眼をそらした。

白鷺はだめだ。

きっとこの先も私に剣を作ってはくれないだろう。

なら、宗太郎は?

彼も刀工だと言ってたし。

白鷺の話だと、宗太郎はあと六日は帰ってこない。

どうしよう。

居酒屋『玉椿』に戻ってみようか。

あそこなら、色んな客が来るし、腕のいい刀工を紹介してもらえるかも知れない。

……夜になったら抜け出そう。

白鷺は夜に鋼を叩く。

白鷺にとっては明るい昼間より夜の方が、温度の見極めや叩き出して不純物を飛ばす微妙な加減がしやすいらしい。

ただ、この世界の夜は暗い。

ああ、月が出ますように!

その時、
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