白鷺の剣~ハクロノツルギ~
戸口にスラリとした男性が立っていた。

黒っぽい地味な袴姿で、腰には長い刀を一刀差していて、ここからはよく分からないけど、小太刀か脇差も帯刀していた。

顔は俯いていてよく分からない。

よく分からないけど……頭が小さくてスタイルもよくて……なんか素敵。

これで顔が良けりゃ言うことないわ。

私は頭をもたげたミーハー根性を押し殺せずに戸口の男性を見つめた。

そんな私の期待通りに、男性がゆっくりと顔をあげた。

……なかなかの男前で、ちょっとびっくり。

通った鼻筋と涼しげな眼が印象的な、例えて言うなら月のような男性だった。

「西山白鷺か?」

男性は白鷺を真っ直ぐに見つめると、静かな澄んだ声で問いかけた。

白鷺は一歩前に出ると、

「いかにも」

短く答えて相変わらず戸口の男性を注意深く見据える。

「単刀直入に言うが」

その声に被せるように白鷺が口を開いた。

「その前に名を伺いたい」

月のような男性が僅かに両目を細めた。

若干イラついたような彼の表情に、私は何だか心配になって白鷺を見上げた。

白鷺がチラリと私を見る。

まるで心配しなくても良いといったように。

「……岡田」

「岡田殿」

「白鷺一翔を譲り受けたい」

「断る」
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