そこにいた

長い入院生活、もううんざりだよ。   





どうして治らないんだろ。





ちゃんと治療も受けてきたのに。





「綾ちゃん・・・・・・?」






そんなことを考えていたら、涙が出てきた。






「思ってること、全部言っちゃいなよ。





一人で背負い過ぎだよ。」






…………全部言えって?






何も知らないくせに。





「・・・・・・。」





止まらない、涙。






「一度、血液検査をするから。」






突然、亮先生が口にした『血液検査』という言葉。






血液検査は定期的にしていて、肝臓の数値を調べるためっていつも聞いてる。





こんな風に不意打ちでしてくることは、滅多にないけど、ある時は何か欠陥がある時……。






不安な気持ちになりつつも、聞いてしまう……。




「どうして、今……?」






「前の血液検査はだいぶ前だったでしょ?」





そんな……たぶん違う。





そんな理由ではない。





「やだ・・・・・・。」





絶対やだよ……。





「あら……綾ちゃん。





また珍しいね。」





私だって嫌なものは嫌なんだから。





だって……





「……どうせ治らないんだもん。」





さらに涙が溢れ落ちる。





治らないって、言葉にするとまた辛くなる。





「そんなことないよ。




完治してる人もいる。」






亮先生がゆっくり説明する。




それでもっ、、、





「亡くなってる人もいる・・・・・・。」







自分の言った言葉に、部屋の空気が凍りつくのがわかった。





「綾ちゃん・・・・・・。」




  

涙が止まらないよ。






「ヒッ・・・・・・ヒッ・・・・・」





既に大量に流れ出た涙の後に、呼吸が荒くなる。




「綾ちゃんっ、それ以上泣いたら、過呼吸になっちゃうよ。





落ち着こう。」






そう言って私の肩に手を置く。
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