そこにいた

今度は私が黙る番だった。




この人にはかなわないな。





最後には……いつも私が責め立てられる。





「・・・・・・自販機で、ジュース・・・・・・を飲んだ。」






怒られるっ!!!




目をギュッとつむった。





「なんでそんなこと?」






意外と優しい言い方に目を開ける……。




「……飲みたかったから。」






しかし、優しいと思ったら大間違いだった。




「ダメだって分かってるよね!?」




  

語尾が強くなる。






「わかってるけど、関係ないよ。





どうでもいい。」






こんなことは言うつもりなかった。   






でも遅かった。





「関係ないことないっ!!!





綾ちゃんの体はジュース一本で、今回のように一つの大切な臓器を使えないようにしちゃうんだよ。





この移植ができなきったら、命だって危なかった。






一生、肝臓を患って、普通の生活が送れなくなっていたかも知れないのに!」





口調が強くなる亮先生に、私の気持ちも次第にヒートアップしていく。






「ジュース飲んだだけで、ダメになるなんて、こんな体、いらない!





移植手術なんて、絶対して欲しくなかった!





もういいからっ!!!





出てって!!!」





亮先生よりもさらに大きな声で言い返す。




それでも……、




「出ていかない。綾ちゃんが分かるまで、とことん話す。






それじゃあ、せっかくドナーからもらった肝臓を大切にできないんだよ。」





静かに諭すようにいう亮先生に、





「私は最初から移植を望んでなかった!!!」





未だに気持ちが冷めないでいた。
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