そこにいた
「いや・・・・、その、どこにも行きませんよ。
ただ、部屋の中を歩いてただけで・・・。」
そういって私の目の前に立ちふさがる亮先生の足元を見ながら、言い訳をしてみた。
「そんなこと言って、本当は?」
「・・・・・・ちょっとそこらへんまで。」
「もうすぐご飯!!!ちゃんと戻って。」
そういうと私の肩に手を置き、私をベッドまで押してくる。
最近は、亮先生の手の温もりを敏感に感じ取る自分がいる。
そして手を離された後の温もりを、いつまでも体が覚えている。
そんなことを考えているから、亮先生と目を合わせることができない。
「綾ちゃん、熱ある?」
といわれ、すぐに手が伸びてくる。
今までなら、素直に受け止めるけど、すばやく身を引いて、触られないように体をよけてしまう。