♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③

(成程…

ん?でも…)

礼士はふと、ある事に気付いて、その事をぼそっと何気なくつぶやいた。

「でも、そう言えば昨日部室には、城田さんらしき人は見かけなかったけれど、一体今どこでどうしているんだろう?」

「礼士先輩、昨日はたまたま部室にいなかっただけじゃあ…」

「違うわ」

「えっ?」

突然、春子の言葉をさえぎるように、重い口調で答えた恵に、驚いた表情を見せた春子。

「ち、違うって一体…」

春子は、即座に恵に聞き返した。

そして、その言葉を受けて恵の口から語られた事。

それは春子と礼士、二人を大いに驚かせ困惑させるには十分であった。

「その子は…もういない。

なぜなら、大会の出場停止が告げられたその晩…

彼女は、亡くなったからよ」

「えっ⁉︎し、死んだ‼︎?」

「ええ。と言うのも…」

恵から語られた、城田結の最期を聞かされて、驚きの表情を隠しきれない春子と礼士。

そしてその様子を見て、不思議そうな顔をしながら恵は、二人に言った。

「さっきから、二人とも様子が変だけれど、もしかしてかるた部にまた何かが起こったんじゃあないでしょうね」

「えっ?い、いいえ。

何にも起こっていませんよ、だね、ハルちゃん?」

「そ、その通り!今後一切、かるた部にな〜んにも起こりません。

今日は、色々とありがとうございました。

では!」

そう言ってそそくさと、目が点になったままの恵をそのままに、礼士と春子はその場から立ち去った。




奇術同好会の部室に戻った、春子と礼士の二人。

今回の事件のヒントを求めに図書室に行った二人だが、得られた情報はむしろ二人を混乱させていた。

「…出場停止が言い渡されたその晩、城田結さんは、積雪で足を滑らせ、歩道橋の階段から転げ落ちて、そのまま…」

「じゃあ一体、どこの誰が、多野たえ子さんに復讐を企てて…礼士先輩?」

「う〜ん、分かんない。分かんないけれど、とりあえず分かる所から整理してみよう。

復讐をする為には、当たり前の事だけれど、まず何より復讐者がいないといけない。

だけれども、僕達が思った復讐する人される人、つまり城田結→多野たえ子の関係は、城田さんがもういないから、吸血奇術師の挑戦状に書かれてある人物Aは、城田結さんではないと見る事が出来る」

「まあ、そういう事になりますよね」

「だから、人物Aはともかく、復讐される側、人物Bはこの挑戦状の内容である、一年前のかるた部の不祥事の元となった多野たえ子さんだと考えていい。

…少なくとも、この文章の冒頭部分を見るのであれば」

「そうですね」

「それから、これがこうで…」

二人は、一枚の紙に今分かる限りの情報を集めて書いてみた。その内容とは、下記の通りであった。

◎人物Aは、多野たえ子に復讐しようとしている

それは、一年前にかるた部で起こった、喫煙の不祥事による連帯責任で、かるた大会に出場する予定だった城田結が出場辞退を余儀なくされた事が原因

◎人物Aによる復讐の結果、多野たえ子と人物Cが被害に遭う

◎人物Aの復讐が失敗に終わった時は、吸血奇術師の用意した方法で復讐を行う予定

しかしこの場合、多野たえ子と人物Cのみならず、人物Aも被害に遭う

ただこれは、吸血奇術師の挑戦状の文面にも書かれている通り、人物A自身が了承している
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