♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「…結局、ほとんど何も分からない、という事だけれども、ただ、今わかる範囲での情報を整理してみて新たに気付いたのは、人物Cが、今回の事件において重要人物らしい、という事になりそうだね、ハルちゃん」

「そうですね。人物Aの復讐結果と、吸血奇術師の用意した復讐結果のどちらにも登場していますしね。

もしかしたら、その人物Cを早く特定する事が、この今から起ころうとしている事件を防ぐ為の近道かも知れませんね。

…でも、どうやって調べましょうか?」

「そこなんだよなあ。結局、人物Cの特定は、人物Aの特定と同じぐらい難しいんだなあ。

あ〜あ、当てずっぽうでいいなら、犯人ぐらいなら直ぐにでも言えるんだけれどなあ」

「えっ?れ、礼士先輩⁉︎だ、誰か心当たりあるんですか?」

「まあ…ね」

「だ、誰ですかそれ!お、教えてくださいよぉ!」

「お、落ち着いてハルちゃん!

あっ!そ、そんなに近寄ったら危ない…って、ああっ!」

「やあんっ!」

勢い良く礼士に駆け寄った春子は、イスに座っていた礼士を、イスごと床に押し倒す形で前のめりに倒れこんだ。

「痛っ!…ちょ、ちょっとハルちゃん!

もう!興奮しすぎだよ!」

「ご、ごめんなさ〜いっ!

…あっ、でも、しばらくこのままでもいいかも。

このまま、お話の続き、お願いしま〜す♪」

春子は今、礼士と床で抱き合うような形になっていた。そして、悪戯っぽい眼差しで礼士の瞳を見つめながらそう言った。

身体中で感じる事の出来る、暖かく柔らかな感触。自分の鼻に垂れ下がる髪の毛からは、心なしかいい香りが漂っていた。

憧れの女の子が、こんなに近くにいて、自分の事をじっと見つめている。

しかし奥手の礼士は、顔を真っ赤にしながら、困った表情をしながら春子に言った。

「ど、どいてくれないと、言わないよ!」

「やん、つまんないですよう。

…分かりましたぁ。じゃあ、礼士先輩は、誰が犯人だと言うんですか?」

春子は、少し残念そうな表情をしながら礼士から離れ、立ち上がった。

そして礼士の手をとって立ち上がらせた。

礼士は気を取り直すと、倒れたイスを起こしてそれに再び腰掛けた。

そしてふうっと一息吐くと、その犯人だと思われる人物の名前を言った。

「…谷本亮」

「えっ!な、何でですか⁉︎」

「かるた部の部室で、多野たえ子とケンカしていただろ?」

「えっ?で、でもそれだけで⁉︎

それじゃあ、根拠に乏しすぎでは…」

春子が半ばあきれ顔でそう答えたが、礼士は続けてこう言った。
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