♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「あり~ま~…」

-バシッ!-

「いに~…」

-パァン!-

「む…」

-ビシッ!-

「な…何なのこの速さ(◎o◎;)」

「神業…だね、ハルちゃんやっぱり無理じゃない?(;◎o◎)」

一月二十日、月曜日。

春子は今、クラスメートの月山美加が所属する、運動場の端に位置するかるた部の部室に、先輩の礼士と共にお邪魔していた。

美加が、二月三日に行われる百人一首の県大会に出場する選手だと知った春子。

百人一首に少し自信があった春子は、どこまでやれるか、一対一の勝負を美加に挑んだのだが…

「あ、あの~ハルちゃん。

さっきから一枚も取れてな…」

「しっ!静かに!

集中力が切れてしま…」

「あさ~ぼらけ…」

「もらった~っ!」

バシッ!と鋭い音が、かるた部の部室に響き渡った。

そして、得意げな顔で今しがた取った取り札を美加に見せつける春子。

「うわ~い、やったやった~!

どう?月山さん?何とか完封は避けた…って、あれ?」

ようやく美加相手から札を取る事ができ、大喜びの春子。

だが、その様子を美加をはじめ、他のかるた部員が、自分の事を苦笑いしながら見つめている事に気付いた。

「や、やだ~、な、なんか盛り上がりに欠けるなあ。

は、初ゲットなんだから誰かほめてくれても…」

周りの、自分の思っていたリアクションとのギャップに、不満げな表情をする春子。

そこに、センターに分けたショートヘアーをなびかせながら、春子に近づいてきた一人の清楚系男子。

「松永さん?ちょっと言いにくい事なんだけれど…」

そう春子に話しかけてきたのは、かるた部員で春子や美加と同じく一年生の、谷本亮と言う男子学生だった。
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