♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「後は、吸血奇術師の指定する、第三の結末とやらの正体をつかまなければいけない。

結局、これが分からない事には、今回の事件は解決には至らないという事だからね、ハルちゃん。

…あっ、来た来た。ありがとうございます。

いやぁ〜っ、ここのチーズケーキ、美味しいんだよね」

「そうですね。まだ今回の事件を解決させるためのキーワードが、全部そろった訳では…

…どうも。ミルクティーは、そこに置いておいて下さい」

「それにしても谷本君は、手のこんだ復讐をしようとするな。

従姉の仇を取る為に、かるた部に入り込んだ所までは分かるけれど、従姉が受けた連帯責任になぞらえた復讐を行う為に、わざわざかるた大会の出場権利を月山さんに譲るなんて…」

「…それは、違うと思います」

「⁉︎」

ミルクティーを一口すすり、カップを皿に置いた春子は、礼士の言葉に反論した。

「月山さんが、今回の事件のテーマである連帯責任の犠牲になる予定なのは、あくまで偶然の産物だと思うんです」

「どういう事だい、ハルちゃん?」

礼士は、チーズケーキをもぐもぐしながら不思議な面持ちで春子に尋ねた。

「本当の所、どの時点で谷本さんが、月山さんがたえ子さんの従妹と気付いたかは分かりませんが、私達が得た全ての情報から考えれば、まあ、十二月一日だという事で良さそうです。

それが確定だとすると、谷本さんが月山さんにかるた大会の出場権利を譲った理由が、復讐とは関係ないという事になってしまうんです」

「どうして?」

「なぜなら、谷本さんが月山さんにかるた大会の出場権利を譲ったのは、十月の終わり頃なんですよ。

つまり、喫茶UNICOで、谷本さんが月山さんとたえ子さんの密会現場に出くわした、十二月一日より前の出来事なんです」

「なるほど。そう言えば月山さんがハルちゃんに言ったんだよね。

谷本君が、月山さんにかるた大会の出場権利を譲ったのは、谷本君が、自分よりも月山さんが出場する方がふさわしいって思ったからだって」

「そうです…

…ん?だとすると⁉︎」

「どうしたの、ハルちゃん?」

「だとすると…おかしいわ、今回の復讐計画は!」

「う〜ん、ハルちゃんは、一体何を思いついたの?」

「いや…あのですね、その…ふと思ったんですけれど。

何で今更、復讐しようなんて思ったのかなあって」

はあ?っといった表情で、春子を見つめた礼士。

そんな礼士の視線を受けながら、春子は話を続けた。

「私だったら、本当に復讐をする気なら、入学してすぐにでも、いや、もっと言えば、入学する前からでも城田結さんの仇の情報を何としてでも手に入れて、出来るだけ早くに復讐してやろうと思いますけれど」

「単純に、チャンスが無かっただけじゃないの?

だから、偶然月山さんと言う、多野たえ子に復讐する為に都合のいい人物を手に入れて、よし、チャンスだ、と思って…」

「チャンスが無かった…と、言うよりは、もしかしたら本当は、復讐自体を当初は考えていなかったんじゃあないでしょうか?」

「えっ⁉︎ど、どういう事だいハルちゃ…

…ゴホゴホ!」

思っても見ない春子の発言に、礼士は思わず口に含んだチーズケーキを喉に詰まらせかけた。

そんな礼士を気遣いつつ、春子は話を続けた。
< 20 / 41 >

この作品をシェア

pagetop