♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
そのすぐ横隣では、カタカタと、忙しくノートパソコンのキーを叩く音がしていた。

春子は言った。

「…突然、怒鳴るんだもの。ビックリしますよね~っ、礼士先輩」

「…まあね」

「でも、さっきの会話のやりとりからすると、あの…ええと多野さん、でしたっけ?

あの人もかるた部員みたいですけれど、ほかの部員と雰囲気が違いましたね」

「…そうだな」

「ん、もう!相づちだけじゃないですか、さっきから!

私の話も適当に聞き流して、一体さっきから何を一生懸命…」

「えっ?ああ、これか?

今、乙女座(ヴァルゴ)と礼士宛ての挑戦状作ってる所さ。

喉が渇いたから、トマトジュースを出してくれ。

いつも用意はしているんだろ?」

「ああ、成程。分かりました。

じゃあ、早速トマトジュースを…




…って、今の礼士先輩は!?」

乙女座、と呼ばれて、いつものように条件反射で礼士の側から飛び退く春子。

そんな春子の様子を見て、クスクス笑う礼士…もといヴァンパイア礼士。

春子は、かばんの中から素早く紙パックのトマトジュースを取り出すと、ヴァンパイア礼士目掛けて投げつけた。

それをナイスキャッチしたヴァンパイア礼士は、早速トマトジュースを左手でチューチューやりながら、右手でキーを叩きつつ、春子に言った。

「そんなに、先程までの出来事が気になるか?

…ふふっ。これじゃあ、俺様から気を利かせるまでもなく、他人様の厄介事に巻き込まれていく運命らしいな、乙女座は」

ニヤニヤ笑いながら、春子の事を見つめるヴァンパイア礼士。

キッ、と、ヴァンパイア礼士をにらみつけながら、春子は言った。

「いつからお目覚めだったのかしら、ヴァンパイア礼士さんは?

また、何か悪巧みを思いついたらしいけれど、今度は何?

お正月明け早々に、事件に関わりたくないんですが」

その春子の言葉を受けて、ヴァンパイア礼士は、ははっ、と笑いながら春子に言った。
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