虹色ファインダー

例えばだけど。
例えば奏次郎が私を撮ったとしても。

こんなにキラキラした写真にはならないだろう。
目がくらむほど、眩しくなんてならないだろう。


しばらく写真を見つめていると、奏次郎が大きく伸びをした。

私は慌てて写真を奏次郎の鞄に戻す。


「……ん、綾香。来てたのか」

「うん、さっき」


奏次郎はのっそりと起き上がると、ポケットから煙草を取り出して火をつけた。


「目覚めの一本が旨いわー」


ほんと呑気だね、オッサン。

奏次郎の煙草の煙りを見つめながらも、瞼にはさっきの写真がチラついていた。
< 33 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop