恋する想いを文字にのせて…
彼女の言葉に頷いて、シートベルトを体に回した。
エンジン音を吹かせ、彼女は慣れない運転を始めた。



行く道すがら、故郷での日々を教えてくれた。
帰った翌日の朝は大雪で、辺り一面真っ白な世界を目にした息子は………


「綿菓子の世界だ!」


ーーと、叫んだのだそうだ。


「学校を転校しても、教室にはすぐに入れなくて。毎日毎日、一緒に学校まで通いました。今もその習慣は続いていて、一体いつになったら他の子と同じ班で登校できるようになるのか見当もつきません…。でも、取り敢えず教室には入れるようになったから、後少しだと思うんですけど……」


「クラスメートとはどう?上手く会話できてるふう?」


気になって聞いてみた。
目線を先に向けたまま、彼女は「まあ…」と小さな声で答えた。


「先生のお話では、パニックを起こすまでの関わりは無いようだ…と。やはり雰囲気が他の子と少しだけ違うのもあって、周囲からも遠巻きに見られている状態なのだと思います……」


「それで支援学級の選択を?」


「それもあります。本人にとって一番楽な選択をしてやらないかと両親や兄に言われたのもあって…。私自身も無理に通常クラスに入れるよりも受けれる支援があるなら、それを受けた方がいいのかな…と、思い始めたので……」


「ふぅん。そうか…」


柔らかい考え方ができるようになったのも、故郷に甘えられているせいだろう。



< 158 / 179 >

この作品をシェア

pagetop