Pathological love
いつものように、行きつけのショットバーへと足を運ぶ。
あっちの都合で、晩ごはんを一緒に食べられない時は、俺は一切料理はしない。
外食して、帰る前にここに寄って、軽く寝酒を煽る。
ほろ酔いで家に帰ると、よく眠れるし、嫌な夢も見ないで済むからだ。
いつもより少し早く店に入ると、そのままカウンターの席に向かった。
ふと見ると、俺のいつもの場所には、先客が座っている。
一瞬、どうするか迷っていると、俺を見つけて、オーナーが近寄って来た。
「いらっしゃいませ………秋山様。いつもより、お早いですね?」
「いつもの所、埋まっちゃってるね。」
「そうなんです………すいません。別の席をご用意致します。」
オーナーの後に続いて移動しようとした時、呼び止める声が響いた。
「あの………よかったら、ここ座ってください。私は、帰りますので。」
「もう、お帰りになるんですか?」
「いつもの場所じゃないと、落ち着きませんよね?よく分かります。それじゃあ綾戸さん、チェックお願いします。。」
カチッとしたスーツに、飴色に艶が出たレザーの靴。
乱れの無いストレートの髪をワックスで流したその男は、清潔感に溢れていた。
年上と思われる男は、スマートに椅子から立ち上がると、ニッコリ笑った。
「どうぞ、ここに。」
「よかったら………一緒に少し、飲みませんか?」
予想外だったのか、彼は少し驚いた様に目を見開くと微かに笑って、隣の席に座った。
「それじゃあ、私は、ここに。」