今すぐぎゅっと、だきしめて。



「……すぐ戻ってこいよ」




少しだけ唇を尖らせた大樹は、頬杖を付いてあたしを見上げた。


……大樹、あんた昔からそうだよね?
まるであたしを妹のように、心配して優しくしてくれた。


嬉しかったよ。
すごく……


でも、ね?


あたしは、もっと胸を締め付ける視線を知ってる。




「奈々子、行って来るね? 花火、大樹とやっちゃってよね」

「……ユイ、どうして……」


驚いたように、大きな瞳をさらに見開いている奈々子。
あたしは質問に答えるかわりに


「二人ともコーラでいいよねッ」


そう言って、浴衣の裾を両手で持ち上げた。




小学校の頃から、奈々子はきっと大樹が好きだ。

あまり自分の事を言わない奈々子。

あたしに好きな人がいなかったからなのか、奈々子と恋愛の話はあまりしなかった。


だって。


いつも三人だったから。




だから、わかるの……。




大樹? 




ほんとの気持ち早く気づいて。



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