今すぐぎゅっと、だきしめて。


背中に二人の視線を感じながら、あたしは一気に自販機まで走った。


コーラ、コーラ……


って、このまま家に帰っちゃった方がいいのかも。



自販機の明かりで、そこだけがまるでスポットライトのように明るかった。





『ユイ』


ぼんやりとその明かりを眺めていると、背後から声がした。



「なに?」



いつもは声に出して言ってくれるのに。

今は頭の中に直接話しかけるんだ……。


その使い分け、何で判断してるの?





ふふん。


もう、驚かないぞ?


どーせ、ヒロでしょ?



あたしは振り返らずに答える。



『このまま帰る気?』

「え?」


あたしの思っていた事をズバリ当てられて、思わず振り返った。


少し離れた場所。


この自販機の光が届かないところで、ヒロはあたしを見つめてる。




――ドクン



この明かりで、なんとかあたしの足元は照らされてる。
だけど、一歩下がるとそこは闇が広がっていた。


そこに、ヒロがいると言う事は暗闇に浮かぶ二つの光でなんとかわかるくらい。




……ヒロ?

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