強引上司と過保護な社内恋愛!?
「あつき」

キンと冷えた夜気に響く鋭い声に私達はギクリと固まる。

あーん、の体制のまま、声の方へと振り向いた。

厳格そうな中年男性が無表情のままこちらを見据えている。

髪を後ろに流し、ネイビーのペンシルストライプのスーツをバシっと着こなした素敵なロマングレーだが、メタルフレームの奥の瞳は冬の冷気にも負けないほど冷やかだ。

「久しぶりに姿を見たと思えば、この体たらくとは相変わらずだな」

男性は軽蔑したように失笑する。

何だ…この無礼千万なおっさんは。

私は眉を潜めてジッと様子を伺う。

「これはこれは、お久しぶりです。こんな場所で会うとは奇遇ですね」

桧山さんはスーツの襟を正しニコリと微笑みかけると、男性はフンと鼻で笑う。

「どうせお前は仕事を強請りに来たんだろう?物乞いみたいに」

あまりに辛辣な男性の言葉に息を飲む。

「お前が我が家の名前を口にして、四方にぺこぺこ頭を下げて回る度に恥をかくのは私だ。お前の兄もな」

どうゆう事?

まさか、この性悪ジジイって桧山さんの父親…?
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