強引上司と過保護な社内恋愛!?
「おい」

ギクリとして振り返ると、桧山さんが直ぐ後ろに立っていた。

顔を見る限りでは、機嫌が悪そうだ。しかも相当。

「何ですか?」

加奈ちゃんは一転し、警戒の眼差しを向ける。

「交通費の精算やっといて」

桧山さんは領収書の束を加奈ちゃんのデスクに放り投げる。

その瞬間、加奈ちゃんの目がつり上がった。

「現金立て替えの支払い依頼書は自分で立ててもらえませんか?法人カードの精算以外は業務範囲外です!」

「俺、忙しいから」

ニコリと悪びれなく微笑む。

…出た。ブラック桧山。

私の背筋に冷たいものが走る。

「私だって忙しいです!」

「ああ、お喋りで?」

「何ですって…?」

加奈ちゃんは愛くるしいオコジョのような顔引き攣らせ、牙を向く。

「シャーッ」という威嚇音が今にも聞こえて来そうだ。

「私やっておきますよ」

これ以上、揉めないよう、私はそそくさと領収書を回収する。

じゃ、よろしくー、と言って桧山さんは席に戻って行った。

「何なんすか?桧山さん!いつにも増して性格悪くないですか?」

加奈ちゃんはプリプリ怒っている。

私はまーまー、と言って宥めすかした。

ご機嫌斜めなのは、やっぱり昨日の出来事が原因なのかと心配になる。
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