強引上司と過保護な社内恋愛!?
お昼から戻るとデスクの引き出しを開けて、総務庶務業務で引き継いだ社員名簿を取り出す。

個人情報の不正利用だけど、ま、いっか。

『東京都中央区佃××-×× ムーンアイランドパークタワー 3715号室』

桧山さんはここにいる。


「今朝から腹痛に襲われて嘔吐と下痢が止まりません。病院に行くので帰ります」

松井課長は外出なので代わりに木彫りの小日向さんに早退する旨を伝えておく。

「その割には滑舌が良いけど」

小日向さんに突っ込まれる。

「そんなことはありません。朝から仕事が手につきません」

「またまたーそんな事言って桧山の看病にでも行くんじゃないの?」

…木彫りにもあっさり見破られるとは。

「一切関係ありませんがなにか」

動揺をひた隠し、ブリザードのような冷やかな視線で小日向さんを見据えると、木彫りは氷刻になる。

お大事に、と言って、それ以上小日向さんは立ち入ったことは聞いて来なかった。

「大丈夫ですか?泉さん」

デスクに戻ると加奈ちゃんが尋ねて来る。

「多分病院に行けば治ると思う」

「でも激辛担々麺食べに行ったんですよね」

「うん、美味しかったよ」

加奈ちゃんはイマイチ納得がいかないような顔をして首を捻る。

何か言われる前に「お先に失礼します」と言ってそそくさとフロアを後にする。

嘘を吐いて会社をサボるなんて入社後初めての事だった。
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