強引上司と過保護な社内恋愛!?
「はあ…」

肇さんが帰った後、桧山さんは気が抜けたのかドサリとソファーに腰を下ろした。

「私、何も知りませんでした」

唐突に切り出した私を桧山さんはきょとんとして見上げる。

「営業本部で営業するのは桧山さんの本意ではないんですか?本当は機械部に戻りたいんですか?」

「いずみん、肇の言った事なんか気にすんなよー。それよかこっち来てさイチャイチャしよう…」

「真面目に答えてください」

いつものように茶化そうとする桧山さんに腹が立った。

私の緊迫した空気が伝わったのか、桧山さんは暫しの間黙り込む。

「うん、営業なんてやりたくない。現場に戻りたい」

そしてボソリと呟いた。

「…そうですか」

正直ショックだ。

営業本部にいる私の事まで否定された気がして少し寂しくなる。

「いずみが営業本部に配属になった時の感想は?」

わくわく動物園に着任になった日のことが脳裏に蘇る。

「なんの冗談かと思いました…夢だったらいいのに、と」

喧しくて慌ただしいあの雰囲気に絶望していた。

「直属の上席は凶暴だし」

チラリと怨みがましい視線を向けると、桧山さんはニッコリ笑って誤魔化した。

だけど、と言って言葉を繋ぐ。
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