強引上司と過保護な社内恋愛!?
11. 捕獲せよ
「あっつい…」

重いトランクを引っ張り、私は空港から一歩外に出ると南国特有の湿気を含んだ空気が身にまとわりついてきた。

そして、果物がすえたような独特の香りが鼻につく。

私はサングラス越しに空を見上げる。

背の高い椰子の木に、容赦なく降り注ぐ美容の大敵紫外線。

来てしまった。

インドネシアバリ島。

何故ここに私が来たのかというと、事態は1カ月前に遡る―――


「最近、桧山さんと連絡取ってる?」

真奈に聞かれて私はデレっと頬を緩める。

「うん…昨日もSkypeでテレビ電話した」

今日のランチは真奈と夏バテ防止のために奮発して鰻を食べに来ている。

「お待たせしました」

店員さんがうな重をと肝吸いをテーブルの上に並べる。

蓋を開けるとふんわり芳しい香りが漂った。

「いただきまーす!」

たまらずガッツこうとすると「まって!」と言って真奈に止められた。

「また写真?」

据え膳食わぬ、で私は思いっきり眉間に皺を寄せる。

「お重の中身をこっちに見えるように傾けてニッコリ笑って!」

私は渋々指示に従う。
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