月、満ちる夜に
だから声をかけたのだけれど、伊達君はわたしが声を発するより先にこちらを見た。
「どうした」
「うん、なんでもない」
曖昧に笑って、左側に回り込む。
ふと伊達君の左目がこちらを見て和んだ。
「こっちは見えないけど、気配で分かるから支障はない」
「気配で?」
でもそれだと、ずっと気を張り詰めてなきゃいけないような気がする。
左側に立てば、車道の車の動きもわたしが気をつけて見ていられるし、伊達君の視界に入っていることができるから安心する。
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