シリアルキラーの秘密
 あの時は今年一番の暑さでした。

 学校の宿題を自分の部屋で黙々とやっていたのですが、暑さに耐え切れず集中力が途切れてしまい母親の結子様の許可を得て屋敷の外を散歩していた日のこと。

 山の奥に佇んでいるお屋敷なものなので緑に囲まれ、とても気持ちの良い風が吹き散歩もそれほど悪くないと思ったときのことです。

 木陰に人の気配がしたのでございました。

私は、何の根拠もありませんでしたが紫苑様だと思い直ぐ様お名前をさけびました。

 「紫苑様!」

 しかしその方はすぐに紫苑様ではないとわかりました。

 木陰によっかかって座っているの方は真っ白な透き通るワンピースを着ており、腕と足はそのワンピースに劣らないくらい、透き通っており細く綺麗な肌をしておりました。

 この敷地では見たことのない自分以外の少女でございました。

 この敷地には橋本家と西川家の二つの家しかないのにこの少女は誰の家の子なのでございましょう。

 橋本家には一人娘の私、薫子。

 西川家には一人息子の紫苑様。

 このお方は一体。

 そう思った瞬間、4月になる前の西川家の歓迎パーティでレイラ夫人が仰っていた独り言を思い出したのでございました。

 「カレンも連れて行きたかったわ。」

 このお方が晶様とレイラ様のもうひとりの子供なのでしょうか。

 私は混乱しておりました。

 すると、いつの間にか私はその少女の前に立ち尽くしておりました。

 声を掛けても良いのでありましょうか。と。


 そう、ひとりで混乱しておりますと、下から

 「なに。」
 
 と、明らかに不機嫌であろう声が聞こえて参りました。

 少女の声はあまり気品ではなく恐怖を感じさせられる声でありました。

 容姿とは裏腹にあまり良い印象ではないように感じました。


 「なに。」
 
 少女はもう一度不機嫌な声で私に問いかけました。

 私も声を発しなくてはと思ったのではございますが思うように声がでないのであります。

「あっ、えっと。」

 
 「橋本 薫子。12歳の〇〇学院小等部6学年。出席番号は22番。趣味はヴァイオリン。
 
 父親の義和は有名な小説家。母親の結子は元銀行員。

 何か間違いでも?」

 えっ。

 なんで彼女は私のことを知っていらっしゃるの。

 私と彼女は今日が初対面なはずでございますのに。


 すると彼女は私の心の中を見透かしたのでしょうか、こう続けたのでありました。

 「何故、私があなたのことを知ってるかって?

 簡単なことよ。

 あなたは隙だらけなのよ。」

 そう言って風のように去って行ったのでありました。

 しかし彼女を見る度、私はこの方は西川家の方なのでしょうかと疑問に感じておりました。

 彼女が「カレン」という西川家の子であれば色々と不可解な点があるのでございました。
 
 まずは瞳の色でございます。

 晶様は日本人でありますから私たちと同じ黒い瞳をお持ちでございます。

 レイラ様は青く、例えるなら海のようなお人形のような目をしおておりました。

 紫苑様もレイラ様程ではございませんが淡い青色の瞳をお持ちになられていました。

 しかし、あの少女の目は私たちと同じ真っ黒な瞳。

 それも、ただの黒ではなく闇の中に吸い込まれて行くような瞳でございました。

 
 それだけではございません。

 決定的な点として髪の色でございます。

 レイラ様も紫苑様も異国人独特の金色の色をしておりました。

 晶様は日本人ではありましたが日本人では珍しい栗色な髪の色をしておりました。

 しかしあの少女は瞳の色と同じ。

 黒色の髪をしておりました。

 例えるなら日本人形の中でも一番美しい人形のような髪の艶でございました。

 彼女は本当に「カレン」なのでしょうか。

 しかし疑問は解けずに新しい年を迎えるまで彼女に会うことはありませんでした。





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