これはとても、小さな恋。
「さあや!さあや‼︎待てって…!」



後ろから翠くんの声がする。



私は必死に逃げた。



「さあやっ!待てって言ってんだろっ」



階段をおりかけたところで、翠くんの腕に私の体は捕獲された。




翠くん、走るの速すぎでしょ。



こんなにあっけなく捕まるなんて…。




「どうしたんだよ。確かに、坂山がありもしない冗談を広めちまったけど。その節は俺が謝っとく。ごめん」



ちがう…ちがうよ。



私は、ただ……。



「ち、ちがうの。私…恥ずかしくて…」




「恥ずかしい?だから、俺のこと見つめてるとかわけわかんねー冗談広められたから恥ずかしんだろ?」




私はふるふると首を左右に振った。




「ちがう…私が、翠くんを…」



「ん?」



ふわりと優しい笑顔を向けて私と向きあってくれた翠くん。



…っ…。




今その笑顔は反則だよ。




これじゃあ、心のブレーキきかない…




「私っ!翠くんのことが好きなのっ!」




「えっ…」



「…だから、翠くんをずっと見つめてたのも本当。でも、それが他の人にバレるなんて恥ずかしくて…ごめんね」




…心が、すっきりした。




挨拶とか他愛のない会話なんていうステップをすっ飛ばかしていきなりの告白。




だけど、思いが伝えられた…。




「ごめん、俺…。さあやのこと…」




「ありがとう。答えは分かってる。だけどね、私、諦めないことに決めたから…」
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