ディスオーダーⅡ【短編集】
 ――あながち間違いではなかったから、だ。


 さすがは天使というべきなのか……目の前にいる天使は、僕の心の中、ぜんぶ見透かしているみたいだ。

 その時、僕はふと、天使が最初に言っていたことを思い出す。


 ――目の前にある毒々しい色をした沼は、“彼女を沈めるためだけ”に作られた沼。

 ――「ボクが今からする質問に正直に答えられたら、彼女を解放してあげる。でも……嘘をついたら、彼女をこの沼に沈める」


 ……なんだ、簡単なことだったんだ。それなのに僕は、長々と馬鹿正直に答えていた。そんな必要、最初からないのに。


「第●●●問。――彼女の名前は?」


 天使から投げ掛けられた、その質問。

 僕は笑いながら答える。


「“知らない”」


 その時、僕は初めて、嘘をついた。

 それを聞いた天使はニンマリと笑う。口角が不気味なほどに吊り上がった。


「ブッブー!キミは嘘をついたね。早速だけれど、彼女には退場願いまーす!」


 大きな声でそう叫んだ天使。その声がトリガーとなったのか、吊り下げられている彼女は目を覚ました。
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