without you

分かってる。
はっきり言って、ぬいぐるみは、「緊急時に持って行くモノ」じゃないと思う。
でも。
ミス・ヘッジホッグは、久遠社長からのプレゼントだ。
「かさばる」と思うほど、場所は取らない大きさだし。
何より、これから待ち受けている辛いことも、“彼女”と一緒なら、少しは和らぐだろう。
寂しさも癒されるはず。

「大切にするから。わたしと・・来て。一緒に」

いつもと変わらない、愛嬌のあるミス・ヘッジホッグの笑顔に勇気づけられた私は、彼女に微笑むと、ボストンバッグのチャックを閉めた。

涙で滲む目で。