without you
あいつから逃げ回る生活を始めた段階で、私はすでに死んだも同然なのだ。
存在も。心も。全て。

趣味なんて・・・もし、10年前、いや、7年前でも社長に「趣味ねえの?」って聞かれてたら、私は迷わず「料理です」って答えていただろう。
今の私は、近場にも行かないし、遠出も全然しない。
ホント、休みの日だからと言って、特に何もしない、無趣味人間。
料理研究家としてのキャリアも、故郷も、家族も友人も全て捨てた後、何も築こうとはしない、無な女。

前進もなく、狭い輪の中で、孤独に留まったまま、また一日が過ぎていく中、感じるのは痛みだけ。
でもこの痛みが、今の私にとっては、生きているという証。

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