without you
8月27日。
今日は、立川さんと有馬部長の結婚式の日だ。
両家のご両親が、二人の結婚に反対しているということで、式と披露宴に出席したのは、「A-spade」の社員がほとんどだった。

大柄で、ガッシリした体に、オーダーメイドのディレクタースーツを着た純世さんは、恋人の贔屓目を抜きにしても、惚れ惚れするほどカッコいい。
現に、他の女性社員たちは、ウットリした眼差しを彼に向け、男性社員たちは、羨望の眼差しで、彼を見ている。
この場の主役になりかねないくらいのカリスマ性を持つ純世さんだ。
対する私の服装は、淡い水色のシルクシフォンワンピース。
膝が隠れるくらいの丈で、袖は、腕が透けて見える生地の薄さ。
裾がフワッと広がる感じが、昼間のフォーマルな席でも通用する軽やかさがあると思って、これを選んだ。
肩に近めの左胸につけているコサージュは、パーティーバッグ、そしてパンプスと同じクリーム色。
前日に、ネイルはパールピンクに塗ってもらった。
パールのネックレスと同じ色合いだ。
式が始まる前に美容院に寄って、髪の艶出しとメイクをしてもらって。
こんなフォーマルなオシャレをしたのは、本当に久しぶりだったので、すごく贅沢なことをしてるって思ったんだけど・・・これらの費用は全て、純世さんが払ってくれた。
「パールは、あみかの誕生石だろ?」というのはこじつけで(でも本当だ)、「あみかの物を買うことは、俺の人生最高の楽しみなんだ。少しくらい俺に甘えてろ」なんて言われても、なんか、恋人同士みたい・・・って、私たち、恋人同士なんだけど!

私はひとりで勝手に照れながら、隣に座っている純世さんを、チラッと見た。

純世さんのネクタイは、ワンピースと同じ、淡い水色だ。
「俺たちはパートナーだからな。どっかでペアにしたい」と言っていた彼が、いつもオーダーでシャツやスーツを作ってもらっている、シカゴにある老舗のスーツ屋さんに頼んで取り寄せたものだ。
式や披露宴の間、私はずっと、純世さんの隣にいる。
そういうことよりも、こういう何気ない“お揃い”ファッションを彼としていることで、あぁ、私はこの人と本当につき合っているんだな、と思って。
そこにある幸せを、私は確かに感じた。

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