without you
今言うのがベストタイミングなことって・・・プロポーズ?!
なのにも驚いたけれど。
私たちはすでに同棲してて。
時々だけど、この人と結婚してるような錯覚に陥ることもあるくらいで。
それでも、改めて「結婚しよう」と彼に言われて、私は素直に驚いてしまった。
表情を隠しきれないくらいに。

「おまえは以前、子どもはひとりで育てる気はないと、俺に言ったよな」と純世さんに聞かれて、私はコクンと頷いて肯定した。

「俺だってそうだ。俺たちの子は俺たちで育てたいと思ってる。おまえだってそうだろ?」
「そう、だけど・・」
「俺と別れて互いに別の道を進むことが、おまえにとっては幸せだと俺が納得できれば、俺はおまえを止めない。潔く別れる。だが、そうじゃねえよな?互いに」
「じゅんせぃ、さん・・・」
「俺に迷惑かけて申し訳ないとか、俺が負担に思ってるだろうと誤解してんなら、今すぐ思い直せ。俺を排除しようとするな。俺はストーカーにはならねえ。だがな、俺は・・・俺は、おまえと一緒に生きたいんだよ。おまえの人生に関わっていたいんだよ。死ぬ瞬間まで。一生」

・・・だめ。
せっかく引っこんでいたのに、涙が・・・次から次へと流れ出てくる。
ここのところずっと、ちょっとしたことで感動しては、すぐ泣いているのに。
私の涙は、枯れることを知らないようだ。
でも。
さっき彼の言葉は、不安で揺れ動いている私の心に、ズンと響いて。
ぶれている私の軸を、正しい方向に導いてくれたような、そんな感じ。
とにかく、彼の言葉は、私に安らぎを与え、彼の温もりは、私にあの感じ―――信頼感―――を思い出させてくれた。

「俺を信頼しろ、あみか。そしておまえ自身を信頼するんだ」と純世さんに言われて、泣いているのと、感極まって言葉が出ない私は、純世さんに抱きついたまま、何度もコクコクと頷いた。

「大丈夫。俺たちならできる。おまえはひとりじゃないんだ」
「・・・ぅん・・・」
「あみか。俺と結婚しよう」
「・・・はぃ」
「二人であったかい家庭(ホーム)と家族(ファミリー)、創っていこう。な?」と純世さんに聞かれた私は、今できる精一杯の笑顔で彼を見上げた。
そして、「はい」と答えた私の唇に、彼はキスをしてくれた。

まるで、誓いの口づけのように。

< 627 / 636 >

この作品をシェア

pagetop