without you
それから2日後、私は久遠純世さんと入籍した。
式は、私の体調が落ち着いてから挙げることにした。
赤ちゃんと一緒に式を挙げることを想像するのも、楽しい。
自分で歩けるくらいに・・「子」と呼べるくらいまで成長してからでも、遅くはないよね。
この手の楽しみは、後に取っておいても腐らないし。
とまで思えるのは、すでに純世さんと一緒に暮らしている上に、入籍まで済ませたからだろう。

式を挙げても挙げなくても、私たちはすでに、夫婦なのだ。

そして純世さんが、私の体調を十分過ぎるくらい考慮してくれた結果、私は「心身の調子が良好な時だけ、会社に出社する」という仕事スタイルに変わった。
おかげで、月に5日くらいの出社になってしまって・・・。
私がそんな状態でも、社長である純世さんは、今までどおり、ちゃんと仕事をこなせている。
その点を私が指摘すると、純世さんは、「あくまでも保留!」にしていた私の退職届を、やっと―――でも渋々―――受け入れてくれた。
それは、私たちが入籍をして2ヶ月と少し経った、12月終わりのこと。
妊娠5ヶ月目に入って、そろそろおなかが出てくるという頃、私は「A-spade」を正式に退職した。

純世さんの秘書という仕事を辞めても、私は、彼の仕事面のサポートをし続けた。
もちろん、その時にできる範囲で。
私がほぼ休職扱いになった頃から、純世さんも、家で仕事をする時間を増やしていたし。
それに、今年に入ってから、海外にある彼の会社の売却を進めていたおかげで、海外への出張自体が大幅に減っていたことも、今の状況を思えば、ラッキーだったと言える。
だから純世さんは、新たな秘書を雇わなかった。
というか、たとえ多忙を極めても、彼は秘書を雇う気はないらしい。
理由は・・・「俺の秘書はあみかだけ」・・・らしいから。

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