俺様な狼上司に迫られて!
「ここで降ろしてください。」
数十分後、部長が運転手にそう告げて
車を停めてもらう。
私も料金を払おうとしたが
部長がカードで先に済ませてしまった。
「あ…すみません。ありがとうございます。」
「………。」
私がそう言うも
部長は何も言わず タクシーを降りて歩いて行ってしまう。
私もタクシーを降りて
部長を追う…が
(っ……ここ…って…)
つい息を飲んで見上げた建物…
それは 彼の住んでいるマンション。
まぁ…きっとこうなるだろうとは思っていたけど。
いざ到着すると…何だか緊張する。
-------ドキ…ドキ…
これから彼と
例の"詳しい話"とやらをするんだろうなぁ、と思うと
心臓がバクバクと大きく鳴る。
…言ってしまったものはもう取り消せないし
今更 忘れてください、とは言えない。
部長と私はエレベーターに乗って
彼の住んでいる階まで上がる。
その間も もちろん無言。
「………。」
「………。」
隣に立っている部長は
もう先ほどまでの酔いは覚めたのか
赤かった頬も普通に戻っていた。
私も もちろん酔いなんて覚めている。
私は部長から視線を逸らして
自分の心臓の音が静かに治まるように
必死で落ち着きを取り戻そうとしていた。
…しかし
そんな試みも虚しく
治まることなく、エレベーターは到着してしまった。
「…降りろ。」
彼の低い声が
耳に響く。