月の丘
「紗耶香ちゃんは、この場所が好きなんだね…。」



沈黙を破ったのは、又しても勇の言葉。


(なんでわかったんだろぅ…そう思いながらも)


「うん!」



元気に返事をした私を見て、勇さんが…


「そうやって、話してるとやっぱり子供だよな〜!」



そう言ってにこやかに微笑む…


「この場所で、他人(ひと)と会うのって始めてだから、記念にこれあげる〜。」


私は、親に見つからない時間帯には、戻りたかったが、勇とも仲良くなりたくて、自分の髪飾りを勇に差し出した。



勇はそれを受け取りながら、


「こんなにかわいいの、いいのかな?僕が貰っちゃって…」



そう話をしながら、勇はポケットをゴソゴソと探って居た。


「あぁ、これがあった…」



そう言いながら、私にクリップみたいな物を手渡してくれた。


「このクリップみたいなの何?」


「僕の学校の制服のネクタイピンだよ、この辺りの学校じゃ無いから珍しいだろ?」



私はそれをいろいろな角度から見回して、生まれて初めて見たネクタイピンを掌に包んだ…



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