センパイ、私を見て下さい。
先輩、あなたが好きです
「ちょっと、あそこにいるの木城先輩じゃない?」



入学してから2ヶ月が過ぎ、ようやく高校生活に慣れてきた。


学校の中はある程度覚えたし、移動教室で道に迷うなんてこともなくなった。


だから、この光景も見慣れてきた。



移動教室のときに必ず目にする光景。


それは、木城竜成先輩が猫を捕まえてじっと眺めているという一見可愛い場面。なんだけど……


「木城先輩、また裏庭で猫睨みつけてるよ。ただ迷いこんだだけなのになんで睨みつけてるのかなぁ」


「しっ!渡り廊下だからってそんな大声出しちゃ駄目!聞こえるよ!」


「睨まれたら殺されるって噂だしね……いやだなぁ。早く行こ!」



皆には木城先輩のキリッとした細い目が怒ってる表情に見えるみたいで、誰も木城先輩のそばに寄らない。


睨んでるんじゃなくて猫と戯れてるだけなのに木城先輩は誤解されてしまっている。


猫と戯れるなんて、怖いどころか可愛いとすら思えるのに……皆は木城先輩の本当の姿を見ようとしない。



「はあ……移動教室じゃなくても木城先輩を眺めれれば良いのに」


足を止めて窓に肘をついてため息混じりにぼやく私に隣を歩いていた友人が驚愕の声を発した。


「明音、まさかとは思ったけど本当に木城先輩のこと好きなの?」


「えっ?そそそんなに、わ、分かりやすいかな……?」


「うわ、顔真っ赤。バレバレだよ。てかよりによって木城先輩だし!」


バレバレ……そんなぁ……これでも平常心を保ってるのに。






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