③愛しのマイ・フェア・レディ~一夜限りの恋人~
 そして。


「こ、これが私?」


 燈子は全身鏡の前に映し出された自分の姿を見、目を丸くした。

 コーディネートからヘアスタイル、メイクまでを終えた店員が、鏡の隅でガッツポーズを決めている。

 燈子はマジマジと鏡を見つめる。

 淡い色合いのミニのワンピースは今季の最新作で、小柄な燈子によく似合う。
 
 綺麗にに巻かれた髪に、エクステを施された睫毛、磨きあげられたツヤツヤのお肌は、上品な薄化粧だけ十分に映え、手足の爪先に可愛らしいネイルまで施されている。

 中でも燈子のお気に入りは、小さな貝殻の形をした、真珠のピアス。
 自画自賛だけど、自分に一番よく似合っているように思えた。

 
 アハハ、ウフフ
 なーんだ、これが本来の私なのね!

 燈子はすっかり舞い上がり、鏡の前でクルクル回転し始めた。
 それを見て店員さんも、ヤンヤと囃し立てている。

 落ち着いた雰囲気の店内が、にわかに賑やかになってきた。

 と___
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