第二秘書は恋に盲目
「確かに大事な娘だよ。可愛がって育ててきた。

そんな娘が、自分の手で幸せを掴もうとしてるんだ。…ふたりのあんな真剣な目を見て、誰があれ以上反対できる…」

父さんは声を詰まらせながらそう言った。
まだ結婚報告じゃないのに気が早いな、なんて思ったけど、俺にもじんとくるものがある。
だがそんなものに浸る俺ではない。

「父さん、そんなんじゃ結婚式が思いやられるよー」

「け、結婚式だと!?」

そう茶化して自分の部屋に戻った。
父さんをからかいたかったのか、それとも自分の中にある気持ちに目を向けたくなかっただけなのか…。
心にぽっかり穴が空いてしまったような気がしないこともないけど、俺は弟として、ふたりを応援するだけだ。
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