第二秘書は恋に盲目
「はぁ。どうやったらこんなに治りが早くなるんだ?
信じられねぇ」

ガーゼを当てられて、どうやら全て終わったらしい。

「治ってるんなら、もう病院には」
「来ないでいいわけないだろ」

椅子から立ち上がった孝宏さんを見上げると…。
片手で両頬をぎゅーっと潰された。

「うぃ、いきます」

こんな形で病院に行くことを約束させられるとは。

「ふっ、変な顔。

行くぞ」

…あれ?普段の私なら、変な顔って言われた時点で怒りが湧いてくるはずなのに。
どうして、きゅんとしてるんだろう。
ただ、初めて笑顔を向けられただけじゃん。ただそれだけなのに、心がざわつく。

…孝宏さん、あんな風に笑うんだ。

いやいや。恋心が芽生えた訳じゃないから。
ほんの少しきゅんとしただけよ。
よく考えてみて。ひどいことの方が多いのよ。

これくらいのこと、明日になったらきっと忘れてる…。
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