オークション
☆☆☆

それからマラソン大会当日まで、あたしは自室からほとんど出る事なく過ごしていた。


たった数日の間で中田優志さんの腕はすっかりあたしに馴染み、術後の痕も綺麗に消えてなくなっていた。


作った作品は5つだが、どれも満足のいく出来栄えになっていた。


後はこれをネットオークションに出品してみるだけだった。


マラソン大会に出場する準備をしてリビングに出ると、両親が驚いたような顔であたしを見た。


「おはよう」


「お、おはよう……。藍那、体調は大丈夫なの?」


「うん。今日はもうすっかり大丈夫だよ」


そう言い、力コブを作って見せたが慌てて腕をひっこめた。


思った以上に筋肉が浮き出てしまったからだ。


「今日はマラソン大会に参加するのか?」


「もちろんだよ」


お父さんの言葉にあたしは即答していた。


そのために今日まで彫刻を作ってきたんだ。


マラソン大会の前には腕を自分のものにしておきたかったから。


「無理しなくていいんじゃないの?」


お母さんは心配そうにそう言ってくる。


「大丈夫大丈夫! ほら、こんなに元気なんだよ?」


そう言って、あたしはその場で飛び跳ねて見せた。
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