オークション
そんな中、モニターの右半分に次々と数字が表れ始めた。


「なにあの数字?」


「さぁ?」


聞かれたってわからない。


首を傾げてどんどん増えていく数字を見ていると、隣座っていた男性がクスッと小さく笑った。


「オークションがもう始まっているんだよ。商品を落としたい人間は、椅子のひじ置きを開ける。


そこには数字を打ち込める機械があって、そこに金額を打ち込み、赤いボタンを押す。


すると画面右側にそれがどんどん表示されていくんだ。わかる?」


説明されながら、あたしは自分の椅子のひじ置きを見た。


右のひじ置きの中央辺りが開閉できるようになっている。


丁度名刺サイズくらいの小さなものだ。


それを開けてみると、電卓のような機械が現れた。


なるほど。


黒スーツの男が言っていた数字パネルとはこのことのようだ。


近代的なシステムが珍しくて、あたしは数字板とモニターを交互に見た。


「でも、商品がまだ出てきてないですよね?」


そう聞くと、男性は目を見開いてそして呆れたように笑い始めた。


男性のよく通る笑い声が会場内に響き、視線を浴びる。


男性は慌てて口を閉じて、そしてあたしを睨みつけて来た。
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