オークション
何も悪い事はしていないけれど、なんだか申し訳ない気分になり「ごめんなさい」と、小さな声で謝った。


「商品は《画家の手》だ。もうステージ上にいるだろうが」


イライラしながらもそう教えてくれる男性。


「え? どこですか?」


あたしはステージ上に出ている絵を確認する。


やはり《画家の手》というタイトルの作品は見当たらない。


「どこを見てるんだよ。《画家の手》っていうのはそのままの意味だ。五良野正子の手が商品なんだよ」


へ……?


あたしは男性の言葉にキョトンとしてしまった。


「まさか、嘘でしょ?」


そう言ったのはエレナだった。


「だよね。冗談きついですよ」


「冗談じゃないよ」


男性はキッパリと言い切った。


その顔は笑っていない。


モニターを見ると値段はどんどん跳ね上がり、5000万円を超えている。


その金額にまた驚きながら、五良野正子の作品がそこまで値段が付くのかと考える。
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