オークション
「そんなっ……」


「藍那は今日も学校を休む予定だったんです。ずっと家にいたはずなのに……どうしてあなたが藍那の制服を着て藍那として学校へ来ているの!?」


「違う! よく見て、あたしだよ!」


懸命に自分の事を訴えかけてみるが、お母さんは険しい顔のまま変わらない。


どうしよう、このままじゃあたし……。


「警察に連絡しましょう。その方が早い」


担任の先生の言葉にあたしは目を見開いた。


冗談でしょう!?


驚きすぎて言葉もでない。


「自分が本当に藍那だっていうなら、警察で指紋を調べてもらえばわかることだわ」


母親の言葉にドキンッと心臓が高鳴る。


確かに、あたしがあたしである証拠は指紋で簡単に証明される。


でも……。


あたしは自分の手をギュッと握りしめた。


この手の指紋はあたしのものではなく、中田優志さんのものだ。


腕を取り換えた時からあたしは自分の指紋さえ持っていない。
< 257 / 274 >

この作品をシェア

pagetop