オークション
「あたし、今困ってるんです!」


「そんなふうに見えてたわ。一体何があったの?」


「実は……」


あたしは今朝学校へ行ってからの事を簡単に説明した。


店員さんは真剣な表情で何度も頷き、そして「大変だったのね」と、言ってくれた。


「お願いです! このままじゃあたし、犯罪者になっちゃかもしれない。助けてください!」


藁にもすがる思いで店員さんにそう言った。


「そうね、あなたを助けたいと思うわ」


「じゃぁ……」


「でも、それはできないの」


その言葉に一瞬にしてあたしの期待は打ち砕かれた。


「このお店、今日で閉店なのよ」


そう言われて店内を見回すと、大きな段ボールの中に沢山の服が詰め込まれているのがわかった。


自分の事に必死で気が付かなかった。


「そんな……」


「下のオークション会場も、もう封鎖されているの」


そう言い、店員さんは試着室のあった場所へと連れて行ってくれた。


そこにあった試着室はすでに撤去されていて、壁は完全に塗りつぶされてドアはなくなっていたのだ。


「嘘でしょ!?」


あたしはその壁に手を触れる。


冷たいコンクリートの感触に、サッと青ざめた。


もうオークション会場へ行くこともできないと言う事だ。
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