オークション
「そう。ここで買える才能はどれも何億もの価値があるものばかりだ。使い方によっては更に価値は上がって行く。


購入した後の努力次第で、一億なんて簡単に返済できるんだよ」


一億が簡単に返済できるなんて、想像もつかない。


半信半疑のままモニターへ視線をやると、藤吉さんが用意された木製の椅子に座り、両手を宙に浮かせて前へ突き出している姿が映った。


何が始まるんだろう?


スタッフが2つ丸い穴が開いた金属製の道具を用意し、藤吉さんがその穴に両手を通した。


一度手を通すと引き抜く事ができない仕組みになっているらしく、ピエロがそれを証明するように機械を持ってステージ上を歩き回った。


藤吉さんはそれについてクルクルとステージの上を回る。


その光景に会場内は笑い声が漏れた。


藤吉さんも笑顔のままだが、それは異様な光景だった。


「ねぇ、あれって大丈夫なのかな?」


エレナがそう聞いてくる。


あたしは左右に首をふった。


今から何が起こるのか全くわからない。


ただここで見守っていることしか、できなかった。


藤吉さんは元の椅子に座らされ、画家の五良野正子の手にも同じものが設置された。


それらの機械がオレンジ色の蛍光灯でギラギラと輝いて見える。
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