オークション
やがてステージ上には何人もの白衣をきた人たちが集まってきて、何かの準備を始めた。


その間にもピエロが面白おかしい話をして会場内を飽きさせないようにしている。


しかし、ピエロの話なんてあたしの耳は全く入ってこなかった。


白衣を着た人たちが包帯や注射器などを用意し始めたのを見て、自分の呼吸が荒くなるのを感じていた。


「ねぇエレナ……」


握っていた手にはジットリと汗をかいている。


「藍那……ここ、出よう」


「うん」


あたしは頷いた。


ここにいちゃいけない。


そう思うのに、体は思うように動かなかった。


モニターの中でほほ笑んでいる藤吉さんに釘付けになる。


彼女をこのまま置いて会場を出てもいいのだろうか?


そんな思いがよぎった。

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