オークション
☆☆☆

「あたし、許せない」


エレナが珍しく怒った口調でそう言ったのは、昼休みだった。


天気がよかったのであたしたち2人は中庭でお弁当を広げていた。


「なにが?」


「藤吉さんのこと」


あたしの質問に間髪入れず返事をするエレナ。


本当に腹を立てている証拠だ。


「そうだね」


あたしも頷いた。


「あの才能は元々……」


そこまで言って、エレナは口を閉じた。


必要以上の事を口に出すとどうなるかわからない。


目の前で射殺された男性を思い出すと、誰も聞いていないとわかっていても口に出す事はできなかった。


「そうだね。藤吉さんは努力してない」


あたしの言葉にエレナは何度も頷いた。


「そんな事でほしいものを手に入れても、きっと空しいだけだよ」


「うん……そうかもしれないね」


いくら藤吉さんが褒められて人気者になっても、それは藤吉さんの力じゃない。


五良野正子の力を借りているからだ。
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