オークション
納得できない才能
翌日。


いつも通りの時間に登校してくると、藤吉さんの席の周りに人だかりができていた。


「おはよう藍那。なに、あれ?」


少し遅れて教室へ入ってきたエレナがそう聞いてくる。


「知らない」


そう言って左右に首を振る。


しかしその集団の中からは「すごい!」とか「これ、藤吉さんが描いたの!?」という言葉が聞こえてきて、みんな藤吉さんの絵を見ているのだと言う事がわかった。


その途端、エレナが顔をしかめて集団から視線をそらせた。


藤吉さんの才能が買ったものだと知っているあたしとエレナだけが、その喧騒に嫌な気分になっている。


「ねぇねぇ、2人ともこれ見てよ!!」


そんなあたしたちにクラスメートは声をかけて来た。


手には昨日スマホで見せてもらった絵を持っている。


実際に見てみるとその存在感に圧倒されてしまう。


スマホで見ただけではわからなかった細部に渡って、細かく写真のように描かれているのがわかった。


「本当だね」


だけどあたしはそっけなくそう返事をした。


藤吉さんの才能は、石澤先輩とは違う。


努力して得たものじゃない。


そう思うと、素直に『すごいね』なんて、言えなかったのだった。
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