オークション
テレビのダイエット企画には必ず呼ばれ、今度ダイエット本の発売も決まっている石澤先輩。


エレナは石澤先輩が自分の努力だけで輝かしい世界を手に入れたと信じている。


「オークションで落札したのを、あたしは見てた」


藤吉さんは迷う事なくそう言いきった。


嘘をついているようには見えない。


いや、自分のやった事を正当化させるためにはこのくらいの嘘平気な顔をしてつくのかもしれない。


藤吉さんの事がわからなくて、混乱し始める。


「もし、本当にオークションで体を買っていたとしたら……石澤先輩も努力して成功した内には入らないね」


あたしはどうにか批判的な言葉を向ける事ができた。


正直、どっちが悪いのかわからなくなってきている。


オークションで購入するのはとても勇気がいることだ。


数字を打ち込む行為にはものすごく大きなパワーがいる。


そんなオークションを勝ち抜いた2人を責められる立場なのかどうか、わからない。


自分の体の一部を取り換えてまで叶えた夢が、あたしにはないから……。


「いいえ。あたしたちは間違いなく成功者だと思う」


藤吉さんが簡単にあたしの言葉を否定した。
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