Last love
出会い
大好きなアーティストのコンサートの帰り
盛り上がり押さえ切れず通りがかりのダイニングバーで呑む事に
ボックス席は半端にいっぱいでカウンターに座る
「まずはビールでしょー」39才の体に3時間のライブはきつい
冷たいビールが喉を潤してくれる
「それにしても同年代とは思えないよね  なんであんなに頑張れるんだろうね」
「私なんか毎日の生活でめーいっぱい 最近は花奈も手がかからなくなってきたからやっと自分の事にもって感じだよ」
カウンターの中にはウェイターが2人  美里達よりちょっと年上と思われる人がオーナーらしい
そしてトオルはアルバイトだった
彼は22才 春に大学を卒業したばかりだ
大学卒業後は就職せずにアルバイトいわゆるフリーターを選ぶ
それには夢があるから
音楽をやりたい
シンガーソングライターになりたい
 ギターは中学で興味を持った アコースティックギターの音が好きだ 好きなアーティストのコピーをやった 歌う事が大好きだった
盛り上がる美里達の会話はカウンターの中のトオルの耳に入る
その話に興味がない訳がない バイトも半年ともなれば慣れた物で持ち前の愛想のよさもあってすんなり会話に入って行ける
「誰のライブだったんですか~」
「☆☆☆☆!!」
「すげー!チケットよく取れましたね」
「ファンクラブ歴10年!」
親指をたてて由美が言う ちょっと古臭いポーズだ
「俺も聴きますよ いいですよね ルックスもいいし」
「へぇー 若い人も聴くんだ~ 最近は男子のファンも増えてるって言うしね」
「男子のファンが増えてるって人格だよね」 会話のうまさは由美が上手だ
美里にはちょっとついて行けない
盛り上がりのパワーはとどまるとこを知らない
日曜日のバーは12時で閉店だ 気がつけばカウンターには美里達とカップルが一組だけだった
「えーもう12時だよー 帰んなきゃ~ お米とがなきゃ~」
「現実にもどすんじゃないよ~」
独身の由美はガッカリな表情だ
せめて☆☆☆☆が夢に出て来てくれたらいいななんてちょっと乙女な気持ちが顔を出す
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