Butterfly
「ごちそうさまでした。本当においしかった」

「うん。さすが、雑誌に載るだけはあるねー。満足満足」

食事を終え、感想を言いながら彼の車に乗りこむと、蒼佑さんは「そうだ」と言って、慎重な様子で口を開いた。

「えっと・・・千穂ちゃん、今日、少し遅くなっても大丈夫かな」

「え?」
 
「いや、まだ7時半だし。よかったらその・・・オレの家に寄らないかなって」

「あ・・・」


(・・・家、か・・・)


どうしよう。

もう少し、もちろん一緒にいたいけど。


(でもやっぱり・・・)


「・・・ごめんね。今日、お父さんずっと家にいるんだ。デートって言ってあって・・・早く帰って来いって言われてるから」

「あ・・・そっか!いや、ごめん、そうだよね!一人娘のお嬢様だもんなー。お父さんに心配かけちゃいけないな」

「うん」と自分を納得させるように頷くと、蒼佑さんはエンジンをかけてゆっくり車を発進させた。

「9時までに帰れば平気かな。道混んでないから、大丈夫だとは思うけど」

「うん・・・。ごめんね」

走ること数分。車はすぐに、国道の広い道に出た。

渋滞のない二車線は、一瞬のうちに次々景色が変わっていく。

時折、街の灯りが差し込む車内。

蒼佑さんはそれからも、何も気にしていないように、私に明るく話しかけてくれた。


(ごめんね、蒼佑さん・・・)
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