櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ

最弱の騎士―Nelo





 ◇




「んんーー!!はあっよう寝たわ!おばちゃーん、俺もう大丈夫なんで、行ってええですかぁ」



 医務室の白いベッドの上で豪快に伸びをしたシュベルマー。


 部屋の奥から顔をのぞかせた、今回の舞闘会のベテラン主任看護師ロマノが困ったように笑いながら返事をする。



「まったく、あんたたち騎士はどこの連中も変わりゃしないね。どうせまだ寝てろって言っても聞きゃあしないんだろう?」


「へへっ」


「だったらもういいよ。さっさと行きな、ただし暴れるんじゃないよ!安静にしてること!!」


「はいはぁーい」



 呑気に応えるシュベルマーだが、実は彼女、フェルダンでは有名な鬼看護師。


 常に無茶ばかりをし、おまけに医者いう事などほとんど聞かない特殊部隊の騎士達専属の看護師になって数十年。


 その恐ろしさは間違いなくフェルダントップクラス、ジンノといい勝負だと言っていいだろう。


 そんなこと知る由もないシュベルマーと、フェルダンにやってきて騎士を目指すようになってからロマノの恐ろしさを痛いほど実感してきたユウ。


 とてもじゃないが何も知らない彼のようにヘラヘラと笑える筈もなく。


 ぎろりとロマノの光る眼がユウを捕えた瞬間、身体が石のように固まる。



「ユウ・アルシェ!!しっかりそこのおバカを見張っとくんだよ!!!」


「は、ハイッ!!!」


「?」



 他国の騎士相手にいつもの恐ろしさを表立っては出さないようにしているようだが、自国の騎士にはやはり容赦ない。


 冷や汗をかくユウを、不思議そうに見つめるシュベルマーであった。



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